菊池環境保全型農業技術研究会
2021年8月6日、熊本県菊池市で無農薬無施肥農業を実践する生産者の組織、菊池環境保全型農業技術研究会の「ほ場」見学会に参加させていただきました。
この研究会は1995年に設立され、農薬や化学肥料を使用しない農業技術を確立し、普及させることを目的に設立されたものです。会員は30軒の農家で、この日は20人ほどが参加。
連日35度を超える猛暑が続いていましたが、この日もほぼ快晴で集合時間の午前8時には既に30度を超える暑さ。
今更ながら地球温暖化の進行を肌で実感。
昨年は、新型コロナの影響で研究会としての集まりがほとんどできなかったとのことで、この日は久しぶりにメンバーが揃って、会員の田んぼ、畑、豚の放牧場を順番に周るという段取り。
田植えが終わって1ヶ月前後が経過しているため、どの田んぼの稲も30〜40センチほどに生育していました。
米の品種はヒノヒカリが多いようですが、他の品種も栽培されています。
山口さんの田んぼ
全ての田圃で話題になったのが、稲を食べてしまうジャンボタニシ対策。
ジャンボタニシは苗が生育する過程で欠かすことのできない雑草の除去を目的に、意図的に導入されているものですが、雑草だけでなく稲の茎も餌にしてしまうため、小まめな管理が不可欠なようです。
ジャンボタニシ
田んぼの水位が高いと稲が被害に遭う率が高いようで、水深を一定に保つために田んぼ自体を水平にしておくことも必要。
ジャンボタニシがその役目が終えたら、田んぼから除去しますが、田んぼに入れたぽんぽん草をいうものに集めて、一気に取り去るというところがありました。
これも長年の経験から得た手法。
しかし、皆さんが一様に口にしていたのが、強い苗を育てることの重要さ。
土の栄養分のバランスを取ること、栄養素の中でも窒素(「チッソ」は当方とって別の印象もあります)は稲に限らず、畑作全般にとって不可欠の栄養素。
そのためにほとんどのメンバーの田圃ではレンゲ草を植え、代かき前にそれを田んぼにすき込んでいます。
といっても、そうしないメンバーもいます。
菊池の豊かな農地は、菊池川か迫間川のどちらかから水を引いていますが、
この方の田んぼは、湧水を使用しています。栽培環境に応じた工夫がなされているということのようです。
次に回ったのが大豆農家2軒。
両方とも3週間前に大豆を植え付け、それぞれの苗が大きな葉をつけていました。
昨年はこの段階で、多くの葉が害虫に散々食われ悲惨な目にあったとのことですが、今年は青々とした葉のほとんど無傷でホッとしていらっしゃいました。
育てているのは、高級大豆の代名詞「フクユタカ」。
会長の内田さんの大豆畑の横には、納豆製造所があり、その日も出荷に追われていました。
納豆のパッケージは経木に紙を組み合わせたもの。主に福岡に出荷されているとか。
内田会長
この会の副会長は「走る豚」のブランドの放牧豚で、熊本県外でも名を知られるようになってきた武藤さん。
放牧場は菊池渓谷のすぐそば、つまり標高も高く冬場は相当な冷え込みとか。この日も吹く風が平地の熱風ではなく、なんとも心地よかったです。走る豚の放牧場は30あり、その内10の放牧場に15頭ずつの豚を育てていらっしゃいます。
猪の侵入を防ぐ柵はありますが、豚は放牧地を走り回り、実に自由奔放。遊休の放牧場設けているのは、土自体を健康な状態に保つため。
走る豚
最後に、中尾さんのお茶畑を見学。
この日訪問したほ場では最も標高が高い山間地にあり、涼しいところですが、
山間地は山の雑草に侵食されやすいため、除草作業が大変とのこと。
除草剤も化学肥料も使用しない、もちろん遺伝子組み換えの品種を忌避する自然農法は、このような方達に支えられているのだと感じた1日でした。
中尾さんのお茶畑
自然のリズムに無理に抗うのではなく、うまく付き合いながら生命力の強い作物を育てていく、皆さんの逞しさに脱帽です。
特に、18ヶ月以上世界規模で人々の生活の苦しめるコロナ禍の終息が見えるどころか、ウィルスが変異を繰り返し猖獗を極める今だからこそ、さらに。